話さない理由
水曜日の夜のクラスに、マルコさんという学生がいる。半年通っているが、自分から話すことはほとんどない。先生の質問にも、短くうなずくだけのことが多い。
最初、先生の川島さんは、興味がないのだと思っていた。しかし、宿題はいつも一番早く出す。テストの点もいい。「やる気がないわけではないんだな」と気づくまでに、二か月かかった。
ある日、授業のあとで川島さんは声をかけた。マルコさんは少し考えてから答えた。「話したくないわけじゃないんです。でも、まちがえるのがこわくて。頭の中で文を作っているうちに、話が次に進んでしまうんです。」
次の週から、川島さんはやり方を変えた。答える前に三十秒、ノートに書く時間を取る。それだけで、マルコさんは手を挙げるようになった。ほかの二人の学生も、前より長く話すようになったという。
もちろん、この方法がすべての人に合うわけではない。時間がかかるので、会話の量は少し減った。それでも川島さんは続けている。「静かな人が、分かっていないわけではありませんから。」
教室で声が大きい人が、一番よく理解しているとはかぎらない。黙っている時間の中で、何が起きているのか。それを想像することも、教える側の仕事なのだろう。
〜わけではない
意味
全部を打ち消すのではなく、「そう思うかもしれないが、実はそうではない」と一部だけ否定する言い方。相手の思い込みを、やわらかく直すときによく使う。
Denies part of what the listener might assume, not the whole thing: "it does not mean that ~". Used to correct a likely misunderstanding gently. Kaiwa form: wake ja nai.
接続
動詞・い形容詞 普通形 + わけではない
な形容詞な/である + わけではない
名詞の/である + わけではない
会話では「わけじゃない」
例文
やる気がないわけではない。
It does not mean he has no motivation.
話したくないわけじゃないんです。
It is not that I do not want to speak.
この方法がすべての人に合うわけではない。
This method does not suit everyone.
毎日行くわけではないが、月に二回は行く。
I do not go every day, but I go twice a month.
ポイント:「〜ない」(全部否定)とは違い、「〜わけではない」は部分否定。「嫌いだ」ではなく「好きなわけではない」と言うと、やわらかい感じになる。
読解問題
1. マルコさんのクラスでの様子はどうか。
2. 川島さんが「やる気がないわけではない」と気づいたのはなぜか。
3. マルコさんが話さない本当の理由は何か。
4. 川島さんが変えたやり方はどれか。
5. この文章で一番言いたいことは何か。
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