JLPT N1 Reading Practice

船ふねを直なおす人ひと

The Boat Mender

N1漁港約6分38文文法:〜つ〜つ

The last boatbuilder in a small fishing harbour takes on the repair of the oldest wooden boat still working there.

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小ちいさな漁港ぎょこうの奥おくに、木きの船ふねを直なおす工場こうじょうが一軒いっけんだけ残のこっている。At the far end of a small fishing harbour, just one workshop that repairs wooden boats remains.主ぬしは檜山ひやまさんという七十三歳ななじゅうさんさいの船大工ふなだいくだ。The owner is a boatbuilder of seventy-three called Mr Hiyama.父ちちも祖父そふも同おなじ場所ばしょで船ふねを削けずっていた。His father and his grandfather shaved timber in the same place.鉄てつとプラスチックの船ふねが増ふえてから、仕事しごとの数かずはめっきり減へった。Since steel and plastic boats became common, the amount of work has fallen sharply.それでも、港みなとの舟ふねは今いまも何艘なんそうか、ここで手てを入いれてもらっている。Even so, several of the harbour's boats are still looked after here.

檜山ひやまさんと漁師りょうしたちは、昔むかしから持ちつ持たれつでやってきた。Mr Hiyama and the fishermen have supported one another by turns for years.船ふねが傷いためば檜山ひやまさんが直なおし、不漁ふりょうの年としは漁師りょうしが魚さかなを持もってくる。When a boat is damaged Mr Hiyama repairs it, and in a poor year the fishermen bring him fish.代金だいきんの話はなしは、たいてい後回あとまわしになる。Talk of payment is usually put off.漁師りょうしの一人ひとりは、春はるになると必かならずわかめを束たばにして持もってくる。One of the fishermen always brings bundles of seaweed when spring comes.「帳面ちょうめんはあるんですけどね、見みても仕方しかたがない」"I do keep an account book, but there's no point looking at it."檜山ひやまさんはそう言いって、作業場さぎょうじょうの壁かべに貼はった古ふるい紙かみを指さした。Saying so, Mr Hiyama pointed at an old sheet of paper stuck to the workshop wall.

去年きょねんの秋あき、港みなとでいちばん古ふるい舟ふねの修理しゅうりが持もち込こまれた。Last autumn, the oldest boat in the harbour was brought in for repair.持もち主ぬしは、八十はちじゅうを過すぎた仁科にしなさんという漁師りょうしである。Its owner is a fisherman past eighty called Mr Nishina.木きの継つぎ目めが広ひろがり、水みずが入はいり始はじめていた。The joints in the wood had opened and water had begun to come in.「これは、手を入れたが最後、半年はんとしは上あげたままになりますよ」"Once I start work on this, mind, she'll be out of the water for six months."檜山ひやまさんは、そう前置まえおきしてから引ひき受うけた。Mr Hiyama said that first, and then took the job on.

仁科にしなさんは、浜はまに立たって舟ふねを見送みおくった。Mr Nishina stood on the beach and watched the boat go.この舟ふねで、父ちちと二人ふたり、浮きつ沈みつの波なみを越こえたのだという。In this boat, he said, he and his father had ridden out waves that rose and fell beneath them.「生まれながらに船ふねに乗のっていたようなものでね」"It was as if I'd been aboard a boat from the day I was born."仁科にしなさんは、笑わらいながら手ての甲こうで目めのあたりをこすった。Laughing, Mr Nishina rubbed around his eyes with the back of his hand.

修理しゅうりは思おもっていたより長ながくかかった。The repair took longer than expected.古ふるい材ざいに新あたらしい材ざいを継つぐのは、見みた目めより難むずかしい。Joining new timber to old is harder than it looks.道具どうぐの多おおくは祖父そふの代だいのもので、鉋かんなの刃はだけを研とぎ直なおして使つかっている。Most of his tools date from his grandfather's day, and he reuses them by resharpening only the plane blades.檜山ひやまさんは、削けずる厚あつみを何度なんども確たしかめながら決きめていった。Mr Hiyama checked again and again before deciding how thick to shave each piece.今いまは作業場さぎょうじょうに居ながらにして、沖おきの波なみの高たかさがわかるという。These days, he says, he can tell the height of the waves offshore without leaving his workshop.朝あさの光ひかりが入はいる時間じかんだけ手てを動うごかし、昼過ひるすぎには道具どうぐを置おく。He works only while the morning light comes in, and puts his tools down after midday.

春はる、舟ふねは海うみに戻もどった。In spring, the boat went back to sea.塗ぬり直なおされた船体せんたいが、朝日あさひを受うけて濡ぬれたように光ひかった。The repainted hull caught the morning sun and shone as though it were wet.仁科にしなさんは、舟ふねに乗のる前まえに檜山ひやまさんに向むかって深ふかく頭あたまを下さげた。Before he boarded, Mr Nishina bowed deeply to Mr Hiyama.「これで、あと十年じゅうねんは出でられる」"Now I can go out for another ten years."港みなとの人ひとたちから笑わらいが起おきた。The people of the harbour laughed.八十はちじゅうを過すぎた漁師りょうしと、七十ななじゅうを過すぎた船大工ふなだいくの話はなしである。This is a story about a fisherman past eighty and a boatbuilder past seventy.

その日ひの午後ごご、港みなとでは若わかい二人ふたりの漁師りょうしが舟ふねを競走きょうそうさせていた。That afternoon, two young fishermen were racing their boats in the harbour.追いつ追われつの二艘にそうが、防波堤ぼうはていの先さきで大おおきく回まわる。The two vessels, each chasing and being chased in turn, swung round wide beyond the breakwater.檜山ひやまさんは作業場さぎょうじょうの戸口とぐちに腰こしを下おろして、それを長ながいあいだ見みていた。Mr Hiyama sat down in the workshop doorway and watched them for a long time.「あの二人ふたりも、いずれ持ちつ持たれつになる」"Those two will end up supporting each other by turns as well."弟子でしはいないが、港みなとがあるかぎり工場こうじょうは閉しめないと言いう。He has no apprentice, but he says he will not close the workshop as long as the harbour is there.木きを削けずる音おとは、今いまも朝あさの港みなとにいちばん早はやく響ひびく。The sound of wood being shaved is still the first thing to carry across the harbour in the morning.

Vocabulary 単語

語よみMeaningJLPT
漁港ぎょこうfishing port
主ぬしowner, masterN1
七十三歳ななじゅうさんさいseventy three years old
船大工ふなだいくboat builder, shipwright
削るけずるto shave, plane (wood)N2
鉄てつironN2
めっきりめっきりmarkedly, noticeablyN1
何艘なんそうhow many boats
漁師たちりょうしたちthe fishermen
痛むいたむto ache, hurtN2
不漁ふりょうpoor catch
漁師りょうしfishermanN2
代金だいきんpayment, the money owedN2
後回しあとまわしputting off until later
束たばbundle, sheafN2
帳面ちょうめんaccount book, ledger
作業場さぎょうじょうworkshop
持ち込むもちこむbring in (work, an item)N2
持ち主もちぬしownerN2
継ぎ目つぎめseam; jointN1
前置きまえおきintroductory remark, preface
引き受けるひきうけるtake on, undertakeN2
浜はまbeach, shoreN2
手の甲てのこうback of the hand

Grammar 文法

〜つ〜つ

doing ~ and ~ by turns · JLPT N1
動詞のます形+つ+動詞のます形〈反対の意味や受身の形〉+つ

二つの動作がくり返し入れかわる様子を表す古い言い方で、文の中では副詞のように使う。「追いつ追われつ」「行きつ戻りつ」「持ちつ持たれつ」「浮きつ沈みつ」のような決まった言い方がほとんどで、自由に作ることはできない。ふつうの動作を並べるだけなら「〜たり〜たり」を使う。

二人は最後まで追いつ追われつの試合を続けた。

The two kept up a neck-and-neck match to the very end.

近所の人とは持ちつ持たれつの関係だ。

With the neighbours it is a relationship of mutual support.

練習 5問

この文法だけの練習問題。四択・並べかえ・正誤で5問。

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〜たが最後

once you do it, no stopping · JLPT N1
動詞た形 + が最後

一度それをしてしまったら、もう止められない、必ず困った結果になるという意味。後ろには「必ず〜」「〜てしまう」など、止めることができないことを表す文が来る。よい結果を言うときには使えないので、その場合は「〜てから」「〜おかげで」を使う。話し手の強い気持ちを表す、かたい言い方。

あのソファに座ったが最後、立ち上がれなくなってしまう。

Once you sit on that sofa, you can never get up again.

この店のおかしは、一度食べたが最後、止まらなくなる。

Once you try the sweets at this shop, you cannot stop.

練習 5問

この文法だけの練習問題。四択・並べかえ・正誤で5問。

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〜ながらに(して)

while remaining in that state · JLPT N1
名詞 / 動詞ます形 + ながらに(して)

その状態のまま、変わらずに何かをするという意味を表す。「生まれながらに」「居ながらにして」「涙ながらに」など、決まった言い方で使うことが多い。二つの動作を同時にする「〜ながら」とは違い、動作の並行ではなく状態を表す点に注意する。

彼は生まれながらに絵の才能を持っていた。

He had a talent for painting from birth.

今は家に居ながらにして世界中の本が読める。

These days you can read books from all over the world without leaving home.

練習 5問

この文法だけの練習問題。四択・並べかえ・正誤で5問。

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Questions 問題

1. 仁科さんの舟の修理について、正しいものはどれか。

  1. 半年ほど舟を陸に上げたままになると、初めに伝えられた
  2. 一週間で終わる見込みだと言われた
  3. 檜山さんは古すぎると言って断った
  4. 仁科さんの息子が自分で直した
答えを見る Show answer

1. 半年ほど舟を陸に上げたままになると、初めに伝えられた
檜山さんは「手を入れたが最後、半年は上げたままになる」と前置きしてから引き受けた。

2. 「持ちつ持たれつ」の意味に近いものはどれか。

  1. 片方だけがいつも助けている
  2. 互いに助け合って成り立っている
  3. 競い合って勝ち負けを決める
  4. 交代で休みを取る
答えを見る Show answer

2. 互いに助け合って成り立っている
「〜つ〜つ」は二つの動作がくり返し入れかわる様子を表し、「持ちつ持たれつ」は互いに助け合う関係を言う。

力だめし Mini test

力だめし 8問

この話の漢字の読み・表記・語彙・文法から8問。解くと、間違えたところだけが復習に出てきます。

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