JLPT N1 Reading Practice

山やまあいの配達はいたつ

The Delivery in the Valley

N1郵便配達約6分40文文法:〜ずとも

A postman walks a mountain round where he knows every house, and one landslide tests how far he will go.

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戸井とい郵便局ゆうびんきょくの配達区域はいたつくいきには、車くるまの入はいらない集落しゅうらくが三みっつある。The delivery area of the Toi post office includes three hamlets no car can reach.吉村よしむらはその区域くいきを、二十二年担当にじゅうにねんたんとうしている。Yoshimura has had that area for twenty-two years.軽自動車けいじどうしゃを峠とうげの駐車場ちゅうしゃじょうに置おき、そこからは徒歩とほで回まわる。He leaves his little van in the car park at the pass and does the rest on foot.一軒いっけんずつ尾根おねを上のぼり下おりして、半日はんにちかかる道みちだ。It is a round that takes half a day, up and down the ridge from house to house.住所を見ずとも、どの家いえの誰だれあてかは、だいたいわかる。Even without looking at the address, he can usually tell which house and which person a letter is for.

一番いちばん奥おくの集落しゅうらくには、今いまは四軒よんけんしか人ひとが住すんでいない。In the furthest hamlet, only four houses are still lived in.八十八はちじゅうはちになる梅原うめはらさんは、その一軒いっけんで一人暮ひとりぐらしをしている。Mrs Umehara, who is eighty-eight, lives alone in one of them.郵便ゆうびんを届とどけるついでに、吉村よしむらは必かならず声こえをかける。Whenever he brings the post, Yoshimura always calls out to her.返事へんじがなければ、裏うらの窓まどから中なかをのぞく。If there is no reply, he looks in through the window at the back.言わずとも、それが決きまりのようになっていた。Even without anything being said, it had become a kind of rule.

梅原うめはらさんには、月つきに一度いちど、遠とおい町まちから手紙てがみが届とどく。Once a month, a letter reaches Mrs Umehara from a distant town.差出人さしだしにんは、四十年前よんじゅうねんまえに集落しゅうらくを出でた息子むすこである。The sender is the son who left the hamlet forty years ago.電話でんわをかけたがらない人ひとで、用件ようけんはいつも手紙てがみで届とどく。He is not one for telephoning, so whatever he has to say always comes by letter.梅原うめはらさんは、その手紙てがみを縁側えんがわで二度にど読よむ。Mrs Umehara reads each letter twice on the veranda.一度いちどは声こえに出だして、もう一度いちどは黙だまって読よむのだ。Once aloud, and then once in silence.吉村よしむらは、その読よみ方かたを縁側えんがわの外そとから何度なんども見みてきた。Yoshimura has watched her read like that many times from outside the veranda.

十一月じゅういちがつの初はじめ、峠とうげの道みちが崩くずれた。At the beginning of November, the road over the pass gave way.前まえの晩ばんの雨あめで、山側やまがわの土つちが落おちてきたのである。Rain the night before had brought the hillside down.車くるまは通とおれず、復旧ふっきゅうには十日とおかかかると知しらされた。No vehicle could pass, and he was told repairs would take ten days.その日ひ、吉村よしむらの袋ふくろには梅原うめはらさんあての手紙てがみが入はいっていた。That day, there was a letter for Mrs Umehara in Yoshimura’s bag.月つきに一度いちどの、あの手紙てがみだった。It was the once-a-month letter.一通を届けたいがために、吉村よしむらは遠回とおまわりの山道やまみちを歩あるいた。Precisely because he wanted to deliver that one letter, Yoshimura took the long way round on the mountain path.沢さわを二ふたつ渡わたり、三時間さんじかんかけて集落しゅうらくに着ついた。He crossed two streams and reached the hamlet after three hours.途中とちゅうで二度道にどみちを間違まちがえ、靴くつの中なかは水みずでいっぱいになった。He lost the path twice on the way, and his shoes filled with water.梅原うめはらさんは、縁側えんがわで郵便ゆうびんを待まっていた。Mrs Umehara was waiting for the post on the veranda.「今日きょうは来こないと思おもっていた」と、梅原うめはらさんは言いった。“I thought you would not come today,” she said.吉村よしむらは、首くびのタオルで汗あせを拭ふきながら、ただ笑わらっただけだった。Yoshimura wiped away the sweat with the towel round his neck and simply laughed.

手紙てがみには、年末ねんまつに帰かえるという一行いちぎょうがあったらしい。The letter, it seems, had a line saying he would come home at the end of the year.梅原うめはらさんは、その日ひから庭にわの草くさを刈かり始はじめた。From that day, Mrs Umehara began cutting the grass in her garden.近所きんじょの人ひとが、手伝てつだいましょうかと声こえをかけた。A neighbour offered to lend a hand.「息子に見せんがため、自分じぶんでやりたいんです」“In order to show it to my son, I want to do it myself.”梅原うめはらさんは腰こしを伸のばして、そう答こたえた。Mrs Umehara straightened her back and gave that answer.聞かずとも、吉村よしむらにはその気持きもちがわかった。Even without being told, Yoshimura understood how she felt.

十二月じゅうにがつの半なかば、峠とうげの道みちは予定よていより三日みっか早はやく直なおった。In mid-December, the road over the pass was mended three days ahead of schedule.年としの瀬せの朝あさ、吉村よしむらは年賀状ねんがじょうの束たばを抱かかえて集落しゅうらくに上あがった。On a morning late in the year, Yoshimura climbed up to the hamlet with a bundle of New Year cards.梅原うめはらさんの家いえの前まえには、見み慣なれない車くるまが止とまっていた。An unfamiliar car was parked in front of Mrs Umehara’s house.玄関げんかんから出でてきたのは、六十ろくじゅう近ちかい男おとこの人ひとだった。The man who came out of the door was close to sixty.「母ははが、いつもお世話せわになっていると」“My mother says you always look after her.”吉村よしむらは、年賀状ねんがじょうを直接ちょくせつその人ひとの手てに渡わたした。Yoshimura put the New Year cards straight into his hands.帰かえり道みち、尾根おねの上うえから集落しゅうらくを見下みおろすと、どの家いえにも煙けむりが上あがっていた。On the way back, looking down at the hamlet from the ridge, he saw smoke rising from every house.

Vocabulary 単語

語よみMeaningJLPT
配達区域はいたつくいきdelivery area
集落しゅうらくvillage; settlementN1
区域くいきarea, zoneN1
軽自動車けいじどうしゃlight car, kei car
峠とうげmountain passN1
徒歩とほon foot, walkingN2
尾根おねridge (of a mountain)N1
上り下りのぼりおりgoing up and down
四軒よんけんfour shops
覗くのぞくpeek in; look insideN2
差出人さしだしにんsenderN1
四十年前よんじゅうねんまえforty years ago
用件ようけんbusiness, the matter in handN1
縁側えんがわveranda, wooden porch
山側やまがわmountain side
復旧ふっきゅうrepair, restoration of serviceN1
梅原さんあてうめはらさんあてaddressed to Mrs Umehara
遠回りとおまわりdetour; roundabout wayN1
山道やまみちmountain pathN2
沢さわmountain streamN1
一行いちぎょうone line (of text)
刈るかるmow, cut (grass)N2
半ばなかばthe middle (of a month)N2
年の瀬としのせthe close of the year

Grammar 文法

〜ずとも

even without doing; even if not · JLPT N1
動詞ない形の「ない」を取って+ずとも(書く→書かずとも / 食べる→食べずとも) / する→せずとも / 来る→来ずとも

「〜なくても」と同じ意味を表す古い形で、かたい書き言葉や決まった言い方の中で使う。あとには「大丈夫だ」「よい」「わかる」のように、しなくても問題がないという文が続く。まちがえやすいのは「する」の形で、「しずとも」ではなく「せずとも」になる。話し言葉では「〜なくても」を使うほうが自然。

言わずとも、彼の気持ちはよくわかる。

Even without being told, I understand how he feels.

急がずとも、開店までには間に合う。

Even without hurrying, we will make it before opening time.

練習 5問

この文法だけの練習問題。四択・並べかえ・正誤で5問。

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〜がために

precisely because; so badly that · JLPT N1
動詞・い形容詞の普通形/な形容詞+である/名詞+である + がために

「〜がために」は「〜ので」「〜ために」のとても古い感じのかたい言い方で、強い理由や願いを表す。「勝ちたいがために」のように、気持ちが強すぎてふつうはしないことまでした、という文でよく使う。日常の会話ではほとんど使わず、書き言葉やあらたまった場面に限られる。まちがえやすいのは、ふつうの理由にも使ってしまうことで、その場合は「〜たために」のほうが自然である。

彼は自分の名を残したいがために、危険な旅に出た。

He set out on a dangerous journey precisely because he wanted to leave his name behind.

店を守りたいがために、主人は一人で朝から夜まで働いた。

Precisely because he wanted to protect the shop, the owner worked alone from morning to night.

練習 5問

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〜んがため(に)

in order to (strong purpose, formal) · JLPT N1
動詞ない形の「ない」を取った形 + んがため(に)(する→せんがため)

強い目的を表すかたい書き言葉で、「どうしても〜したいから」という気持ちを表します。かたい文章や演説などで使われ、日常の会話ではあまり使いません。前と後の主語は同じで、後ろには意志のある行動を表す文が来ます。「する」は「せんがため」という特別な形になるので注意しましょう。

自分の店を持たんがため、彼は十年間働き続けた。

In order to have his own shop, he kept working for ten years.

記録を破らんがため、選手たちは厳しい練習を重ねた。

In order to break the record, the athletes piled on hard training.

練習 5問

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Questions 問題

1. 峠の道が崩れた日、吉村はどうしたか。

  1. 配達を次の日に延ばした。
  2. 車で遠回りをした。
  3. 三時間かけて山道を歩いて届けた。
  4. 手紙を局に預けた。
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3. 三時間かけて山道を歩いて届けた。
月に一度の手紙を届けるため、吉村は沢を二つ渡り、三時間かけて歩いて集落に着いた。

2. 「〜ずとも」はどんな意味か。

  1. 〜しなければならない
  2. 〜するつもりだ
  3. 〜してはいけない
  4. 〜しなくても
答えを見る Show answer

4. 〜しなくても
「〜ずとも」は「〜なくても」と同じ意味を表す古いかたい言い方である。

力だめし Mini test

力だめし 8問

この話の漢字の読み・表記・語彙・文法から8問。解くと、間違えたところだけが復習に出てきます。

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