JLPT N1 Reading Practice

川かわの渡わたし守もり

The Ferryman on the River

N1渡し船約6分38文文法:〜(よ)うが〜まいが

A ferryman keeps a five-minute crossing running on the half hour, even on mornings when nobody can get across.

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荒谷あらや川かわの下流かりゅうに、今いまも一いっそうの渡わたし船ぶねが残のこっている。On the lower reaches of the Aratani river, a single ferry boat still survives.対岸たいがんの集落しゅうらくと町まちをつなぐ、片道五分かたみちごふんの船ふねである。It is a five-minute crossing linking the town with the hamlet on the far bank.橋はしは上流じょうりゅうに一本いっぽんあるが、歩あるけば三十分さんじゅっぷんの遠回とおまわりになる。There is one bridge upstream, but on foot it means a thirty-minute detour.船頭せんどうの柏木かしわぎは、父ちちの跡あとを継ついで二十八年にじゅうはちねんこの船ふねに乗のっている。Kashiwagi, the boatman, took over from his father and has worked the boat for twenty-eight years.運賃うんちんは大人百円おとなひゃくえん、子こどもは無料むりょうだ。The fare is a hundred yen for adults and nothing for children.

この渡わたしは、町まちが村むらと合併がっぺいしたときの約束やくそくで動うごいている。The ferry runs under a promise made when the town merged with the village.客が乗ろうが乗るまいが、朝六時あさろくじから夕方六時ゆうがたろくじまで、三十分さんじゅっぷんごとに出でる。Whether or not anyone boards, it leaves every half hour from six in the morning until six in the evening.雨あめの日ひもあり、客きゃくが一人ひとりもいない日ひもある。There are rainy days, and there are days without a single passenger.「誰だれも来こないのに出だすんですか」と、新あたらしい役所やくしょの担当者たんとうしゃに聞きかれたことがある。“You run it even when nobody comes?” a new official at the town hall once asked him.柏木かしわぎは短みじかく答こたえた。Kashiwagi answered briefly.「待まっている人ひとがいるかもしれませんから」“Because someone might be waiting.”

春はる、対岸たいがんの小学校しょうがっこうに通かよう子こは三人さんにんだけになった。By spring, only three children were crossing to go to primary school.この渡しなくしては、子こどもたちは三十分さんじゅっぷんの遠回とおまわりをすることになる。Without this ferry, the children would face that thirty-minute detour.柏木かしわぎは、三人さんにんの名前なまえと乗のる時刻じこくを手帳てちょうに書かいていた。Kashiwagi had written the three names and their boarding times in his notebook.一番いちばん上うえの女おんなの子こは、六年生ろくねんせいの千明ちあきだった。The eldest was Chiaki, in her sixth year.千明ちあきは毎朝まいあさ、七時十分しちじじゅっぷんの便びんに必かならず乗のってくる。Chiaki never missed the ten past seven crossing.船ふねが岸きしを離はなれるまで、ロープを押おさえるのを手伝てつだってくれる子こでもあった。She was also the sort of child who helped hold the rope until the boat pulled away from the bank.

六月ろくがつのある朝あさ、川かわは濃こい霧きりに包つつまれた。One morning in June, the river was wrapped in thick fog.対岸たいがんの木きも、桟橋さんばしの柱はしらも見みえない。Neither the trees on the far bank nor the posts of the landing stage were visible.柏木かしわぎは桟橋さんばしに立たったまま、動うごけなかった。Kashiwagi stood on the landing stage, unable to move.出そうにも出せない、というのはこういう朝あさのことだ。A morning like that is what it means to be unable to set out however much you want to.学校がっこうに電話でんわを入いれ、彼かれは霧きりの晴はれるのを待まった。He rang the school and waited for the fog to lift.八時はちじを過すぎて、ようやく対岸たいがんの形かたちがぼんやり見みえてきた。It was past eight before the shape of the far bank finally showed faintly through.船ふねを着つけると、三人さんにんは桟橋さんばしで肩かたを寄よせ合あって待まっていた。When he brought the boat in, the three of them were waiting on the landing stage, huddled together.千明ちあきは怒おこるどころか、「音おとでわかりました」と言いった。Far from being cross, Chiaki said, “We could tell from the sound.”霧きりの中なかでも、船ふねのエンジンの音おとは届とどいていたのだという。Even through the fog, she said, the noise of the engine had reached them.

夏なつの終おわり、市しの会議かいぎで渡わたしの廃止案はいしあんが出だされた。At the end of summer, a proposal to end the ferry came up at a city meeting.利用者りようしゃは一日平均十四人いちにちへいきんじゅうよにんという数字すうじが示しめされた。The figure presented was an average of fourteen users a day.柏木かしわぎは会議かいぎに呼よばれ、手帳てちょうを開ひらいて話はなした。Kashiwagi was called in, opened his notebook and spoke.「数字が増えようが増えまいが、この五分ごふんを必要ひつようとする人ひとはいます」“Whether or not the figures go up, there are people who need these five minutes.”会議室かいぎしつは静しずかになった。The room went quiet.市しの担当者たんとうしゃは、「地元の声なくしては決きめられない話はなしです」と言いった。The official in charge said, “Without local voices, this is not something we can decide.”結論けつろんは、三年後さんねんごにもう一度いちど考かんがえるということになった。The conclusion was that they would look at it again in three years.

秋あき、千明ちあきが卒業文集そつぎょうぶんしゅうに渡わたし船ぶねのことを書かいた。In autumn, Chiaki wrote about the ferry for her leavers’ anthology.「霧きりの朝あさ、音おとだけが聞きこえた」という題だいだった。The title was “A foggy morning, and only a sound.”文集ぶんしゅうは町まちの広報こうほうにも載のり、渡わたしを見みに来くる人ひとが少すこし増ふえた。The piece was reprinted in the town newsletter, and a few more people came to see the ferry.柏木かしわぎは相あい変かわらず、客が来ようが来まいが三十分さんじゅっぷんごとに船ふねを出だしている。Kashiwagi still sends the boat out every half hour, whether or not a passenger comes.桟橋さんばしの柱はしらには、父ちちの代だいからの古ふるい鉄てつの輪わが、今いまも残のこっている。On the post of the landing stage, the old iron ring from his father’s day is still there.

Vocabulary 単語

語よみMeaningJLPT
下流かりゅうdownstream; lower reachesN2
一艘いっそうone boat
渡し船わたしぶねferry boatN1
対岸たいがんthe opposite bankN1
集落しゅうらくvillage; settlementN1
片道五分かたみちごふんfive minutes each way
上流じょうりゅうupstream; upper reachesN2
遠回りとおまわりdetour; roundabout wayN1
船頭せんどうboatman; ferryman
跡あとmark; traceN2
継ぐつぐto take over, succeed toN2
二十八年にじゅうはちねんtwenty-eight years
運賃うんちんfareN2
渡しわたしferry crossingN1
合併がっぺいmerger; amalgamationN1
三十分ごとさんじゅっぷんごとevery thirty minutes
担当者たんとうしゃperson in charge (agent)N2
時刻じこくtime (of day)N2
七時十分しちじじゅっぷんten past seven
便びんservice, run (bus or flight)N2
押さえるおさえるpress; hold downN2
霧きりfog; mistN2
桟橋さんばしjetty; pier
柱はしらpillar, postN2

Grammar 文法

〜(よ)うが〜まいが

whether or not · JLPT N1
動詞意向形(〜う/〜よう)+が + 同じ動詞+まいが

「〜(よ)うが〜まいが」は、そうしてもしなくても結果は変わらないと言うときの硬い言い方です。同じ動詞をくり返し、前半は意向形、後半は「まい」を使います。まちがえやすいのは、後半を「〜ないが」にしてしまうことです。書き言葉では「〜(よ)うと〜まいと」もほぼ同じ意味で使われます。

雨が降ろうが降るまいが、試合は行われる。

Whether or not it rains, the match will be held.

彼が来ようが来まいが、会議は予定どおり始めます。

Whether he comes or not, the meeting will start as scheduled.

練習 5問

この文法だけの練習問題。四択・並べかえ・正誤で5問。

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〜なくして(は)

without ~, nothing is possible · JLPT N1
名詞+なくして(は)+打ち消しの表現(〜ない・〜なかった)

「それがなければ〜できない」という意味を強く言う、かたい書き言葉です。名詞に直接つき、あとには必ず打ち消しの言葉が来ます。「〜なしには」とほぼ同じ意味ですが、「なくしては」のほうが文章らしい言い方です。まちがえやすいのは、あとに肯定の文を続けることで、そのときは「〜なしで」を使います。

みなさんのご協力なくしては、この会は開けませんでした。

Without everyone's cooperation, we could not have held this event.

日々の努力なくして上達はない。

There is no improvement without daily effort.

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〜(よ)うにも〜ない

cannot, even though one wants to · JLPT N1
動詞意向形+にも+同じ動詞の可能形の否定(〜(よ)うにも〜られない)

しようとしても、事情があってできないと言うときに使います。前と後ろには同じ動詞を使い、後ろは可能形の否定にします。まちがえやすいのは動詞をそろえる点です。前と後ろでちがう動詞を使うと、意味が通じません。

道具がなくて、直そうにも直せない。

I cannot fix it even though I want to, because I have no tools.

声が出なくて、電話で伝えようにも伝えられなかった。

My voice was gone, so I could not tell them by phone even though I wanted to.

練習 5問

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Questions 問題

1. 霧の朝、桟橋で待っていた千明は何と言ったか。

  1. 学校を休むと言った。
  2. 橋を渡ってきたと言った。
  3. 遅いと怒った。
  4. 音でわかったと言った。
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4. 音でわかったと言った。
千明は怒らず、船のエンジンの音が霧の中でも聞こえたので「音でわかりました」と言った。

2. 「〜(よ)うが〜まいが」はどんな意味を表すか。

  1. そうしてもしなくても結果は変わらない。
  2. そうしたら大変なことになる。
  3. そうしたいができない。
  4. そうしたほうがよい。
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1. そうしてもしなくても結果は変わらない。
「〜(よ)うが〜まいが」は、するかしないかに関係なく結果は同じだと言うかたい言い方である。

力だめし Mini test

力だめし 8問

この話の漢字の読み・表記・語彙・文法から8問。解くと、間違えたところだけが復習に出てきます。

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